「週刊COMPASS」第111号

小説復興・文藝復興を真剣に目指していますが、その第一弾・書影です。

共通テストで思わぬことが……。

中高一貫男子校に通う穂高英信は、中学から野球に打ち込んでいました。曾祖父の代から総合病院を経営する家に生まれ、四代目として期待されています。

高校二年のときに医学部受験は相当に困難な成績であることを自覚します。成績優秀な弟が継げばいいと考えますが、その弟から医者にはなっても継げないと明かされます。その事情に、ままならないのが人生だと思わされます。

野球部の同学年は、英信ともう一人しかいません。そのエースの彼とバッテリーを組んで主将を務めているのが英信です。そのような状況で受験に打込むために野球部を辞めるのは、彼の心は穏やかではありませんでした。

猛勉強の末に迎えた翌々年一月中旬のいよいよ本番。そこで彼はなんとも大胆な行動を取ることになります。

その理由は、一般的には、普通ではあり得ないと思われるでしょう。でもそこに、その人間だけの思いと、悔まれることを避けたい、これもまた思いが籠められています。そして、以前の号にも書きましたが、そんな行動を取れる彼は母親から、「心も体も〇〇」だと言われていました。

極めて個別的なことが描かれながらも胸を打つ普遍性のあることが、優れた小説たる所以に違いありません。

藤岡陽子さんの書下ろし長編小説「僕たちは我慢している」(5月13日発売)からです。

受験生の皆さんにとっては、思い通りのテストであることを祈ります。

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