「週刊COMPASS」第96号

小説復興・文藝復興を真剣に目指していますが、この時期にもこんなに咲くのかと今朝撮りました。

「買わないと損する」

前職はコピーライターだった同学年の小説家に教えてもらった、訴求力としては最強のコピーだそうです。

彼が言うには、人は、「得する」と言うよりも、「損する」に弱いようです。

それを踏まえて、心にもないことなど言えないので、心底思うことを申し上げます。

藤岡陽子さんの新刊『森にあかりが灯るとき』(PHP研究所)を読まないと、後悔しますよ。

ほとんどの人が避けられないことです。そのときでは遅いので、その前に考えて決めておかなければなりません。

小説は本来答えを書くものではありませんが、答えが丁寧に描かれ、はっきりとした言葉でも書かれています。今後の日本社会における待ったなしの「介護」という問題にがっぷり四つに組まれたとき、作家の良心として書かざるを得なかったと察します。

年齢の高い方、意識の高い方は普段から十分に考えて、腹を決めていらっしゃると思います。考えるときの参考にと、小説を手に取る人は滅多にいないでしょう。でも、実用書、ノンフィクションで学ぶのはあまり楽しいものではありません。頭で分かったつもりになっても、なかなか行動は伴わないものです。人を変えるのは、経験と感動です。疑似体験と文学的感動です。

件の作品はシリアスな現場が描かれてはいても、不可解な出来事、窺い知れない人物、突如視界が開けるような研究・開発等……興味に引かれてページを繰る手を止められません。

読後、心地よい緊張感から解放されたとき、どうあるかの「あり方」は定まっていると思います。その定まり方は、頭で分かってのことではなく、心に響いてのことです。そして、希望の光も窺えます。

「純文」か「エンタメ」に括られるものではなく、正にCOMPASS羅針盤です。

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