「週刊COMPASS」第84号

小説復興・文藝復興を真剣に目指しています。

「余裕のない人に小説は読めませんよね」

ほとんど初対面の年長者に同意を求める言われ方だったので、敢えて否定はしませんでした。その「余裕のない」というのは、生活に追われているというニュアンスだと思います。

他人がどのように世界を見ているのかは分かりません。目の前のことしか見ずに一生を終える人もいるかもしれません。レンズを引くことなど一度もなく。他人の立場になって考えたり、自分自身を客観視することなどもほとんどなく。

でも、この二つが難しいということは、人間は人との関係において成り立っているので、仕事もプライベートもあまりうまくいっていないだろうと思うのは余計なお世話でしょうか。

本は、読んだ分だけ足下に積み上げられ視点が上がることによって視野が拡がる、と言われています。その視野の広がりを広角レンズと言えば、小説を読むことによって働く想像力は、望遠レンズにもなると言えます。遠くて見えないものも分かる、ということです。

小説を読んでお金が入ってくることはありませんが、気持ちに少しでも余裕が出来ると、今までになかった展望が開けるかもしれません。

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