「週刊COMPASS」第53号

小説復興・文藝復興を真剣に目指していますが、隣同士なのになんでこんなに色が違うのでしょう。

人生における貸借表というものがあるなら、返済期限は近いのに、借りばかりだと思っています。

今年2月のある朝、ゴミを家の斜め前の集積場所に出しに行くと、向かいの道路に女性が自転車とともに佇んでいました。

戻る時、その女性が何かを訴えるように人の顔を見るので素通りできず、声を掛けました。

ガードレールにぶつかったら自転車が動かなくなったと言います。

取り敢えずは上着を着て出直し、見てみると、フロントブレーキがロックされていました。

いろいろ試みましたがうまくいきません。寒いし時間もなかったので家の場所を訊ねると、4~500メーターの距離でした。

前輪を持ち上げて歩くことにしました。女性は黙って付いてきます。

何かやたらと重い自転車で50メーターほど歩いてこれは無理だと家の前に戻り、工具箱を取りに行きました。

メカに詳しくはありませんが、ブレーキワイヤーのナットを冷え切ったプライヤーで緩めたりしたらなんとかロックは解除できました。

ブレーキの調整など確かにはできないので、絶対乗らずに引いて帰られてから自転車屋さんに行ってみてもらってくださいと言いました。

女性は自転車を引いて無言で立ち去り、以後お会いしていません。

不思議な女性でした。借りの多い者のところを回ってくれているのかもしれません。

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