「週刊COMPASS」第62号

小説復興・文藝復興を真剣に目指していますが、ゲレンデを目指すこともあります。

「人間は修行のために生まれてくる」 

最も身近にいる者は、この言い方をあまり気に入りません。

「人間は幸せになるために生まれてくる」なら、彼女も気に入ると思います。

幸せとはなんでしょう。

生き甲斐なのか旅好きの友人がいます。元気なうちに行けるだけ行っておきたいと言います。

その元気がなくなって行かれなくなったらもう十分に行ったからって満足できるの、と訊きました。

彼は、もっと行きたかったと思うだろうねと苦笑しました。

海上での遭難者が一旦海水を口にしてしまうと、喉の渇きが際限なくなると言われます。

旅行は海水と同じだなどと言いたいのではありません。旅行が、仕事をリタイアしての平板な日々における単なる刺激、それこそがエンタメだと思いますが、その意味でしかなかったら喉の渇きが癒えることはないでしょう。

敢えて刺激を求めなくても、生きて在ること自体が穏やかな刺激に満ちているのだと喜びを感じられるようになることこそが、至上の、天下無敵の幸せのように思います。

そしてそのように在られるための修行だと思っています。第51号、52号に書きました「最後の最後まで、今がいちばんいいと言いたい。」ためにも。

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