小説がいつから「エンタメ」と呼ばれるようになったのか。
五木寛之さんの『さらばモスクワ愚連隊』の後書きに、「自分の作品を、いわゆる中間小説とも大衆文学とも思ってはいない。私は純文学に対応する<エンターテインメント>、つまり<読み物>を書いたつもりである」とあります。
これが小説の「エンタメ」呼称、その起源だと推測します。五木さんは、中間小説か大衆文学かなどと論議されることが嫌だったのではないか。だからその前にご自分で、「エンターテインメント」と言われたのではないか。コピーライターでもあった五木さんの、当時としては斬新な言葉選びだと思います。
その「当時」と言うのは1967年、56年も前のことです。 現在を当時と比べると、ネットの普及が拍車を掛けて娯楽の数が桁違いです。それなのに、短縮形になったとは言え変わらぬ呼称。読書はたった一人で一字一句を追っていく極めて能動的な行為です。同じエンタメなら受動的で楽なほうがいいと思うのが人情ではありませんか。
コメントを残す