「週刊COMPASS」第166号

小説復興・文藝復興を真剣に目指していますが、人間がいつまでも見飽きないとされている二つの内の一つです。

「時代が下り坂だと、すべての傾向が主観的になる」

「現実が新しい時代に向かっている時は、すべての傾向が客観的になる」

とゲーテは言ったと、朝日新聞のコラム「素粒子」にありました。

さすが文豪だと思います。

真冬の選挙が象徴的かもしれません。いまどこに石を投げても、シュカ-ンと音がするのではないでしょうか。

小説を読む人が少ない時代を表しているようです。

他人に適切なアドバイスができる人でも、自分のこととなると分からないんだなと思うことがあります。自分自身を客観視することは容易いことではありません。

そこで、やはり小説です。

登場人物にいくら感情移入しているとは言っても、自分自身に対するよりははるかに客観視ができます。

ここが大事なところですが、小説は感情移入しながら客観視もできるのです。小説を読むことによって、そのゆとりの視点が育まれていきます。

人の気持ちを想像できるようになると、人に寛容になれます。そのような人が増えていくと、世の中がおおらかになります。

石を投げたら、キャッカーン。小説復興。

藤岡陽子さんの書下ろし長編小説『僕たちは我慢している』(COMPASS)に登場する香坂淳平君。彼のように人に寄り添える人間が多くなったら、世の中がよくなると容易に想像できます。

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