「週刊COMPASS」第180号

小説復興・文藝復興を真剣に目指していますが、今朝見かけた満開のサツキです。

小学二年生の少年がいました。

担任の先生のお話しです。

「あしたの日曜日は母の日です。みなさん、お母さんに日ごろの感謝をしましょう」

白いカーネーションの子もいたように思いますが。

日曜日。きのう赤いカーネーションは持って帰りましたが、何をしたらいいのか、先生の言うことを守る少年は決めかねていました。

彼は、休日で、庭仕事をしていた父親に訊くことにしました。同じ立場である三つ上の姉にはなぜ相談しなかったのか、謎です。

「お父さん、『母の日』、どうする」

家族で食事に出掛けることはあったので、そのようなことを期待していたのかもしれません。

一瞬の間があってから、父親は口を開きました。

「お父さんのお母さんは、死んだよ」

少年は、そんな言葉は知りませんでしたが、二の句を告げられませんでした。

結局どのような母の日になったのか、その後のことは彼の記憶にはありません。

その少年が将来どんな大人になっていったのか、ちょっと心配な気もします……。

となり駅の、この辺りでは少しは気の利いたものが置いてあるストアがあって、開店時刻に行ってきました。

95歳の母は礼を言って、「わたし、ロールケーキ好きなのよ」、と言いました。

今週の日曜日、少年の62年後でした。

藤岡陽子さんの書下ろし長編小説『僕たちは我慢している』(COMPASS)に登場する母親たちの、読者からの人気は、息子たちに劣らず高いです。

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